月経困難症
月経困難症は、月経に随伴しておきる下腹部痛、腰痛、頭痛、嘔気、イライラ感、気分の落ち込みなどにより日常生活に支障をきたすものです。
月経困難症は、子宮内膜症、子宮腺筋症など原因となる疾患がある場合と原因となる疾患がなくおこる場合があります。
若年者は原因となる疾患のない月経困難症が多いと言われていますが、最近はこういった人たちから将来子宮内膜症が発生しやすいことがわかってきており、早めのホルモン治療が勧められています。
治療
一番簡単な方法は消炎鎮痛薬で痛みをおさえる方法です。これで十分な効果がなければ、保険で処方できる低用量ピル(LEP製剤)、黄体ホルモン(子宮内膜症がある場合)、子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS:黄体ホルモンが放出される避妊リングで保険適応です。)を用います。LEPは、月経前の様々な不快症状(イライラ、うつ傾向、ニキビ、頭痛など)を軽減するので(後述)、最近は月経困難症の治療の主流になっています。
過多月経
生理中1日に何度もパッドを交換しないといけない、血の塊が多く出るなどの症状で判断します。過多月経が続くと、鉄欠乏性貧血になり、動悸、息切れ、倦怠感の症状が出てきます。
原因
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症など婦人科疾患以外に、甲状腺機能異常、血液疾患、肝機能障害など内科疾患のこともあります。
治療
エコーなどで、上記の疾患の有無を調べます。そして、それぞれの原因に対して、止血剤、保険で処方できる低用量ピル、子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS:黄体ホルモンが放出される避妊リングで過多月経に保険適応があります。)を用います。
不正性器出血、機能性子宮出血
日本人女性の標準的な初経年齢は12歳、閉経年齢は51歳です。
正常月経は、25~38日の周期で3~7日間持続する性器出血と定義されています。
月経以外の出血は不正性器出血です。
不正性器出血の原因には、以下の疾患があります。
- 炎症によるもの:細菌感染、性感染症、子宮頸管炎、子宮内膜炎、萎縮性膣炎
- ホルモン異常:卵巣機能不全、中間期出血
- 良性腫瘍:子宮頸管ポリープ、子宮筋腫など
- 子宮膣部びらん
- 悪性腫瘍:子宮頸がん、子宮体がん、膣がん、外陰がんなど
- 妊娠に関連するもの:切迫流産、異所性妊娠、胞状奇胎など
検査
視診(出血部位の確認)、妊娠反応検査(妊娠が否定できない時)、子宮頸部(体部)細胞診、エコー検査、血液検査(ホルモン検査)を行います。
治療
疾患がある場合は、その治療を行います。機能性子宮出血と診断した場合、少量出血の場合は、経過観察もしくは止血剤を処方します。月経と同じ量の出血がある場合は、ホルモン療法を行います。
月経前症候群(PMS)
月経前症候群(PMS)は、排卵期から月経までの黄体期に認めるいらいら、気分の落ち込み、頭重感、乳房痛、下腹部膨満感、腰痛、浮腫などの症状で、月経開始4日以内に消失します。PMSのうち特にいらいら、気分の落ち込みがひどく、日常生活に支障をきたすものを月経前不快気分障害(PMDD)とよんでいます。
生活面での注意点
炭水化物摂取促進、精製糖・人工甘味料摂取制限、規則正しい生活、適度の運動が勧められます。
治療
PMDDについては、保険で処方できる低用量ピル(LEP製剤:PMDDには保険適応外です。)を用います。
その他、症状に応じて漢方薬、利尿薬、抗不安薬、抗うつ薬を用います。