子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内膜あるいはその類似組織が子宮外で発育・増殖する疾患です。子宮内膜症は、生殖年齢女性の約10%に存在し、近年増加しています。
症状は、ひどい月経痛、性交痛、排便痛、慢性的な骨盤痛などです。子宮内膜症の問題点は疼痛だけでなく、子宮外の組織と癒着するため不妊症の原因となることもあります。(子宮内膜症の患者さんの約20~30%が不妊症といわれています。また、不妊症の方の約40~50%は子宮内膜症があるともいわれています。)また、卵巣に内膜症があると、チョコレート嚢胞(卵巣嚢腫)、を形成し、約0.7%が癌化するといわれています。
治療
- 低用量ピル(LEP製剤:保険適応の低用量ピル)
鎮痛薬で効果がない場合、処方します。 - ジェノゲスト
年齢、症状などによって、LEPとどちらを使うか、決めていきます。 - 子宮内黄体ホルモン放出システム
黄体ホルモンが約5年間持続的に放出される避妊リングです。過多月経、月経困難症に保険適応されます。挙児希望がない方に適しています。 - GnRHアゴニスト
- 手術療法
チョコレート嚢胞の約0.7%が癌化するといわれているので、チョコレート嚢胞の大きさが6cmを超える場合、悪性が否定できない場合、疼痛が強い場合は手術がすすめられます。手術が必要な場合は総合病院へ紹介させていただきます。
子宮腺筋症
子宮腺筋症とは、子宮内腔にある子宮内膜組織が、子宮筋層内で発育する病気です。 子宮腺筋症では、通常の月経のように子宮筋層内にある子宮内膜が出血をおこし、子宮は次第に大きくなります。症状は子宮内膜症と同様、ひどい生理痛、腰痛などです。
治療
月経痛など疼痛に対して
- 鎮痛薬
- 低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP製剤:保険適応の低用量ピル)
鎮痛薬で効果がない場合、処方します。 - 子宮内黄体ホルモン放出システム
黄体ホルモンが約5年間持続的に放出される避妊リングです。過多月経、月経困難症に保険適応されます。挙児希望がない方に適しています。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮の筋肉である平滑筋が異常に増殖してできる良性の腫瘍です。30歳以上の女性の約20~30%に認められます。正確な原因はわかっていませんが、エストロゲンという女性ホルモンが関係しているといわれており、閉経とともに縮小します。症状がない場合も多いですが、筋腫ができる位置、大きさによって、過多月経(レバー状の血の塊が出る。)、月経がだらだら続く、貧血症状、ひどい生理痛などの症状が出る場合もあります。
治療
子宮筋腫があるからといって、必ずしも治療が必要というわけではありません。ご本人の症状、年齢、挙児希望の有無を総合的に判断して、治療方針が決まります。特に症状がない場合は経過観察で構いません。ただし、閉経するまでは子宮筋腫が大きくなる可能性があるので、定期的な検診が必要です。
- 対症療法
月経量が多い場合は止血剤、貧血がある場合は鉄剤、生理痛がひどい場合は鎮痛剤、子宮収縮抑制剤を処方します。 - GnRH agonist 療法
月1回注射をして、卵巣ホルモン分泌を一時的に抑えることにより、一時的な閉経状態をつくり、子宮筋腫が小さくなることが期待できます。ただし、注射を止めると月経が再開して子宮筋腫が再び大きくなるので、根本的な治療ではありません。手術前に子宮筋腫を小さくするために行うことが一般的です。 - 手術療法
子宮筋腫の根本的な治療は手術療法です。手術は、子宮筋腫だけ切除して子宮は残す方法(子宮筋腫核出術)と子宮筋腫を含めて子宮全て切除する方法(子宮全摘術)があります。